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「凄いな、ここ」
「そうだろう。また康成とこうして話せるとは思っていなかったよ」
「そうだな。けど、智也が神様修行するなんて驚きだよ」
智也も天国で過ごすものだと思っていたらしい。だが、康成を助けたことにより霊格が上がったらしく神様となる資格を得てこのアパート『神成荘』に来ることになったそうだ。不思議な縁だ。神様の声が聞える祖母はすでに知っていたようだが。
「康成の霊感もだいぶ強くなっているようだな」
「ああ、そうみたいだ。あそこにいる子狼も子天狗も子烏天狗も子蛇も神様の眷属なんだろう」
「そうだ。人助けをすることで修行になるらしい」
なるほどな。
「そういえば、キンも神様の眷属なのか」
「あの猫か。あいつは違うな。けど、神様と人とを繋ぐ役割を持っているのかもしれない」
んっ、なんだ。いつの間にかやってきていたキンが胡坐をかいた膝の上に乗ってきた。噂をすればなんとやらってやつか。本当に不思議な猫だ。
「キン、おまえって人の言葉わかっているのか」
なんとなく訊いてみた。もちろん返事はない。ただチラッとだけ睨まれただけだ。そんなこと訊くなと言いたいのだろうか。
「康成はキンに好かれているんだな」
「そんなことないよ。いまだに撫でさせてくれないんだから」
「そうか。もしかしたら今なら撫でられるかもよ」
確かに膝上にいるキンなら。康成はゆっくりとキンの背中に手を持っていく。いつもならサッと逃げてしまうのだが、今日は違った。おっ、撫でさせてくれるのか。キンの毛並みは柔らかで触り心地がよかった。これって認められたってことなのか。神様修行の場であるアパートに来ることが出来た時点で自分は何かが変わったのかもしれない。智也もはっきり見えているし、想像上と思われていた者たちも今はしっかりとこの目に映る。きっと、神様の声も姿もわかるに違いない。
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