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僕には親友がいる。彼は小学校からの友達で、鈍間で敬遠されがちだった僕に唯一、声をかけて優しくしてくれた存在だ。 ただちょっと彼にも欠点があって、彼と出掛けるとそれは特に浮き彫りになる。 葉も落ちた桜並木を2人で歩いていると、彼は突然立ち止まった。 「どうしたの?」 「……」 彼は何も言わず、ただじっ、と桜の木を見つめている。木、というよりは、根の方を見ているように思う。 そう、彼の欠点とはこういうところだ。 突拍子もないことをしてのけ、これがトラブルの原因にもなれば、また僕を助けてくれるときだってある。 欠点といえども半分は長所としての活躍を見せるが、問題はこれだけではない。 ふと、横から彼がいなくなっていることに気づく。 当の彼はふらふらと木に近寄り、そしてしゃがみ込んだ。じぃっ、と根元を見つめ、そして鞄から突如スコップを取り出した。 「え、ちょっと?ていうかスコップなんて持ってきてたの」 僕の言葉が聞こえていないのかそれとも無視しているのか、彼からの返事はなく、今は夢中で土を掘り返している。 * 暫くの間根元を掘ることに熱中していた彼だったが、ふとその手を止めた。もう彼の足元には大きな穴が出来ていて、それは丁度小柄な人間1人はすっぽりと入れるくらいのサイズになっていた。 彼はこちらを振り向き、僕を呼んだ。仕方ないな、と駆け寄ると、隣に座るように目で訴えかけられる。 穴の中は硬い土に覆われていて、少しひんやりとしている。近くで見るとわかるが、この穴は確かに彼が今さっきあんな小さなスコップで掘り起こしたにしては少々大きすぎる。 彼の方は、いつものように無表情で、何を考えているかは分からない。 けれど、僕はそんな彼と、ぽっかりと空いた穴とを見比べては笑みを漏らし、首から下げた銀色のチェーンは、きらりと太陽の光を反射して光った。
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