気になる彼はシャボンの香り

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そのため春立さんは社内でもナンバー1、2を争うほどの人気者。 きっと気になっているのは私だけではない。 春立さんの顔立ちは精悍で、なにより笑顔が素敵だと思う。 彼に笑顔を向けられると時間が止まったような気さえする。 7つの歳の差があるせいか、異性なのに色気も感じられる。 今もそう。 彼はスーツのジャケットを脱ぎネクタイを外し、シャツの袖を捲っているのだが、肘の下から手首のかけての少し血管が浮き出ている腕と、長い筋張った繊細な手の甲はとても綺麗。 時間が止まったなら、触れてみたいと思うほど。 その手が、私の方へ伸びた。 「飯島さんの食べてるの何?」 胸がドキリと音を立てるけれど、それを隠し「あ、これ鰻の塩辛です」と説明する。 「鰻?」 「はい。鰻って変わってますよね、でも美味しかったですよ?」 「そうなの?俺、見るの初めてかもしれない」 「私もです」 目を丸くし驚く様子の春立さんは普段のクールさがやや抜け気味。 こちらの春立さんが素なのだろうか。 「飯島さん珍味系好きなの?」 私の前にはなまこ、あん肝と珍味が揃っている。 部長が珍味好きな私のために毎回頼んでくれるからだ。 「えぇ」 「へぇ」 普段はそれが嬉しくてたまらないが、女子っぽくない面を見られ少し恥ずかしいと思ってしまうのは、春立さんの前だから。 「私の父がすごく飲む人で幼い頃から食卓にはおつまみが必ずあったんです。そのせいか私まで好きになってしまって……」 いいわけしてしまうほど、居心地が悪い。
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