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部屋に帰ると猫がシャワーを浴びていた。
鍵を探しているあいだ、鼻歌が窓の向こうから聞こえていた。
小さなアパートだから脱衣室なんてない。
わずか四畳足らずの板の間が、玄関兼、台所兼脱衣場だ。
床に無造作に投げ出されたバスタオル。
僕は磨り硝子の扉の向こうへ向けて「ただいま」と声を掛ける。
猫は扉を細く開けて、おかえり、と鳴いた。
濡れた猫の頭を撫でてやる。
ネクタイを外しスーツを脱いで、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
何をつくろうか。昨日買っておいたキャベツを、とりあえず刻むことにする。
猫が風呂から出てくる。
バスタオルにくるまって、包丁を持つ僕の手元をのぞき込む。
「お腹空いた?」
訊くと、ちいさくうなづいた。
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