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ただただ泣きべそをかいて伝えるなんて思春期の少女みたいな真似をして、彼の気を引く気などこれっぽっちもなかった。
けれど今、こんなに掛け値なしに彼に想いを伝えたい自分がいる。
恋なら何度かしてきたのに、初めての気持ちだった。
家門さんの目が、嬉しそうに細められる。
「ごめん、ガキみたいに嬉しい」
「そんなこと、わたしの、ほう、が」
「起こして」
わたしよりも大きな手のひらに、ようやく触れることができた。
その瞬間、全身にびりりと甘い痺れが走る。
「……ッ」
小さく震えると、家門さんは悪戯っぽく笑った。
「なに感じてんの。触れただけやで」
「だって……」
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