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……どうしてかって。
顔の筋肉を初めて使う人のように、
ぎこちなく、とびきりの笑顔をつくる。
…だって、
きみは、
優しいじゃないか。
いつだって、多くの人の物語に彩りを与えている。
与えないときだって、あるわ。当然。
不可能なときもあるだろう。物理的にね。
でも、それでもきみは
いつだってそこで繰り広げられる小さな物語を支えてきた。
支えてきたし、想いを遂げさせてあげようと願っているじゃないか。
……だから、ぼくの想いも叶えさせてくれると思ったんだ。
彼女はすこしからだを揺らして、かさかさ笑う。
その、当然と言わんばかりの口ぶり。ばからしい。
そんな保証、どこにもないのに。
…わたし、優しくなんかはないのよ。
いつも、見ているだけ。
……それに、あなたみたいにわたしのことを気にかけている人なんて
めったにいない。わたしは、いるようでいない
背景みたいなものなんだから。
ぼくは、彼女が自分を卑下しているのがつらくて、
たまらない気持ちになる。どうして、そんなに自分を低く見積もってしまうんだ。
この世界の人々が、きみをどれほど愛しているか知らないのだろうか。
ぼくは、全力で伝えたい。
きみがあきれて納得するまで、主張するつもりだ。
その覚悟をもって、今日は寝間着まで持ってきてしまった。
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