ーねぇ、信じてよー

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さっき、きみは見ているだけと言った。 その見ているだけの行為が素晴らしいんだ。 きみは昔から見てるだけということに長けている。 たいていは口を挟みたくなるんだ。 自分の頭の中で生成された考えが一番だと思い込んでいる。 そして、それを親切そうに助言してあげる自分を気持ちよく思ってしまう。 なんだか、イヤな生き物ね。 だろ。 その点、きみは本当に分をわきまえているね。 少し前に流行った言葉で言うと、 「空気を読む」ともいえるだろう。 空気は、いただくものよ。 きみは生真面目にそう答えた。 そんな彼女にいとおしさを感じ、 思わずそっと手を添える。 あら。気安く触れないでちょうだい。 あぁ、ごめん。つい。 わたし、もう一人では満足に生きていくこともできないのだから、 大事に扱ってよね。 気をつけるよ。それで…良いよね 許してくれるかな。 すぐにまた否定されると思った。 でも、そうはならなくて、 しばらく二人の間に空気が流れた。 さわさわさわ…… さわさわ………
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