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……わたし、そんなに価値あるかしら。
弱々しい声。
夕陽を眺めてつぶやくような
こんなさみしい声、初めてきく。
これまで彼女が抱えてきた悩み、とまどい、
ぼくは何にも知らない。
でも、いまここで即座に肯定してあげなければ、
彼女はあしたには砂のように
さらさらと消えてなくなってしまっているかもしれない。
そんなことあり得ないのだけど、
あり得そうなくらい、ぼくは危機感を抱いた。
下腹部に力を入れる。
価値、あるに決まっているじゃないか。
ありまくりだよ。…というか、価値という言葉がよくないよ。
価値あるとか、価値がないとか、そういうことじゃないんだ。
彼女がぼくを見ているのが分かる。
ぼくはひるまず見返す。
それまで独り言のようにささやいていたボリュームをあげ、
ありったけの声を出す。
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