ーそして、満開ー

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……生き血って、死んでるっつうの。 なにそれ、だれの妄想。 文豪の妄想だよ、たしか。 へぇ。文豪にも「中二病」があるのね。 文豪だから「中二病」なのよ、きっと。 じゃないと、言葉なんて紡げないんじゃない。 案外、その文豪が桜の声を聞いたのかも。 桜の声。 そう。満開の桜は、きっと自分を見て欲しかったのよ。 見ているじゃない。現に、いま。 違う。ただ、きれいだなーって眺めているんじゃなくて、 ほんとうに、視るっていうこと。 もっと、よく視てほしかったし、聞いて欲しかったんじゃないかな。 ……なんだか、きみの妄想を聞かされている気がするんだけど、 あなた自身に春が来ているから、浮かれたお戯言として 受け取りますよ。 木の下まで歩みより見上げると、 桜の天蓋が広がっている。 うすい桃色と、黒々とした枝。すきまの空。 さわさわさわ…… さわさわ……
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