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「ちょっと待て、意味がわからん」
手のひらを突き出して制止をかけたが、美男子は三和土で靴を脱いでギシギシ床を軋ませて寄ってくると、真面目な顔でさらに不可解な言葉を吐いた。
「あなたに惚れました。フォーリンラブです」
「……おまえ、ふざけるなよ」
「ふざけてません。本気です。この目をみてください」
上体をかがめ、ずいっと顔を近づけてくる。くっきり二重で切れ長のキリッとした瞳に、困惑した中年男が映っている。
信じられないことに、そこにはミジンコサイズの嘘もなかった。
――漢の本気は、目を見りゃわかる
亡き親父の口ぐせが、頭の中に響いた。
ゴクリと息を呑む。
こいつ、マジだ……。
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