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博多駅からほど近い路地裏に、白壁にワインレッドの重厚なオーク扉が映えるバーがある。
高級感漂う佇まいと、内部が窺い知れない造りから入りにくい雰囲気だが、ある一部の人の間では有名な店である。
テーブル席が3つとカウンターだけの狭い店内には女性客しかいない。新たに入ってくるのも女性ばかりだ。そして、そこここで交わされる甘い言葉。――そう、ここはビアンバーだ。
白百合が咲く店内で、俺はにこやかに注文を取っている。
女の園に立ち入りを許されている理由は、俺の母さんがここのオーナーだからだ。
そしてカウンターの中でドリンクを作っている女性は店長の美咲さんである。
彼女は母の恋人……いや、妻というほうが正しい。
二人は俺が中学一年のときに出会い、恋に落ちた。
母さんは結婚したあとで自分の性癖に気付いたが、子供もいるのでひた隠し、隠したまま一生を終えるつもりだったらしい。
そんな母さんの心を解放したひとが7歳年下の美咲さんだった。
まぁ、言ってみれば彼女は両親の離婚原因だ。
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