栄光をあなたへ

俺のヴィーナス

美咲さんは母さんと養子縁組しているので戸籍的には姉になる。感覚的にも（歳は離れているが）姉的存在だ。

高校までは彼女たちと暮らしていたが、大学に入ってから一人暮らしを始めた。それも母さんの教育方針の一環だ。

「親と暮らしていると、どうしても甘えが出るものなの。一人で暮らして初めて、生活する大変さがわかるのよ。いまどき家事ができない男なんてゴミよ。私はあなたを粗大ゴミにしたくないの」

そう言われてマンションを追い出され、大学へのアクセスが良い地下鉄沿線のマンションを借りた。

マンションの近くに小さな公園があり、その横に古くてこぢんまりとしたモルタル平屋があった。
その格子窓から伺い見えたサンドバッグやリングからボクシングジムであることは察せられたが、人気がなかったのでもう廃業していると思っていた。