栄光をあなたへ

出会い

「俺、生まれてこのかた風邪ひとつひいたことありません。ついでにいえば掠り傷ひとつ作ったことがありません。バンドエイドに触ったこともありません」

「そうか、それはまるでダイヤモンドのような頑丈さだな。だがハードが強靭なぶん、ソフトが弱くなったんだろう。大丈夫、おまえまだ若いし、日本の医療は日々進歩している。早期発見早期治療。明るい未来がおまえを待っている。さぁ、病院へ行ってこい。そしてもう来るな」

美男子が、ぐっと胸を押さえた。

「……痛い。今の一言で俺のハートが再ブロークンしました。これはもう修復不可能です。どんな名医にも治せない。だから責任取って結婚してください」

何こいつ怖い！　け、警察、警察……あ、スマホの電池切れてる。どうする。……殴るか？　いやいやいやいやそれは駄目だ。曲がりなりにも元プロボクサーの俺が素人を、それも、こんな若い……たぶん俺よりひと回りは年下だろう若者を殴るわけにはいかない。

そうだ、落ち着け俺、ここは大人の余裕で対応するんだ。相手は子供。でかくてもイケメンでも子供。