俺のヴィーナス

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*** 真実の恋に出会ってから毎日楽しくて仕方ない。 無意識のうちに顔がほころんでしまう。 その日も、浮かれた気分で大学を出て地下鉄に乗り、吉田ジムへ直行した。 ここ数日は4限までにして17時頃には着くようにしていたので、貫一さんは俺が来る時間を見越していたのだろう。カゴ付きのママチャリにまたがってスタンバっていた。 「ロード行くぞ~!」 デートタイムの始まりだ。 ウキウキしながらウェアに着替え、ランニングシューズを履いて走り出す。 ジムを出て、住宅地の路地を西へ抜けると大きな一級河川に突き当たる。その川沿いにあるランニングコースとして整備されている土手を北上していく。 日暮れどきだが、俺たちの他にもジョギングしている人たちがちらほらいる。 この道の終点は、河口そばの公園だ。そこまでの片道は6km。これを往復する。毎日同じコースだけど飽きたりはしない。 なんたって可愛いハニーが後ろから追ってくるのだから。 「シャドウ!」 愛らしく野太い声に応えて、走りながら左右の拳をまっすぐ前に打ち出す。 シュッ! シュッ! 「力むな!」 「はいっ」
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