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12kmの走り込みを終えてジムへ戻った。スチールドアを開けると、しみついた汗と皮の匂いが迎える。
ジムの奥にある大きな鏡の前に立ってファイティングポーズを取ると、貫一さんが戸棚からデジタルベルを出して3分にセットし、「始め」と声を上げた。
脇をしめて、拳は目の高さでキープ。この基本的な形を維持しつつ、リズムを刻むようにステップを踏み、全身のバネを使って拳を前に突き出す。
「シュッ! シュッ!」
「よーし、いいぞ! あとは軸を意識して身体を崩さないようにしろ。そしたら打ち込んだ後すぐに次の攻撃ができるから」
「はい!」
言われたことを意識してひたすら幻の相手の顔を叩いていると、あっという間にベルのゴング音が3分を報せた。
1分間のインターバルを挟んで、これをあと7回繰り返すと思いきや、
「じゃあワンステップ進むか。智典」
「はい?」
くるっと振り向くと、眼前に拳があった。
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