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オーブンを覗いていたところを背後から抱き締められ、菓子よりも甘い声で囁かれる。
「んー、あと十分ぐらいでできるよ。でも焼き上がった後、少しの間置いて熱を取らなきゃいけないから、実質は二十分ぐらいかなぁ」
菓子は出来上がりをすぐに食べても美味しいが、やはり粗熱を取った方が味も落ち着く。隼士は一刻も早く食べたそうだが、最高の状態の物を食べて貰うためにも、摘まみ食いは絶対に阻止しよう。
「あ、そうだ。今回はたくさん作ったから、明日、光太さんに渡して貰っていい?」
「何だ、俺が全部食べようと思ってたのに」
「隼士ぉ?」
「というのは嘘だ。分かった、光太さんには世話になったし、礼と共に渡しておこう」
即座に戻ってきた返答に、やや焦りが含まれている。絶対に最初の言葉は本心だっただろうと疑いながら、朝陽は話に出た光太とのことを思い出した。
光太といえば、あの一件の後も今までと同じ付き合いを続けている。いや、それどころか、二人と光太との関係は以前よりも一層強いものになった。
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