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 寝言は寝てから言いやがれ。  その日、十年来の恋人であり、昨夜『俺と一生一緒に生きて欲しい』とプロポーズされたばかりの相手から衝撃的な言葉を投げつけられた松葉朝陽は、思わず暴言を吐きそうになった。 「だから、そこにいる君は一体誰だ? どうして俺の病室にいる?」  心根の強さを印象づけさせる鋭い眼差しが、容赦なく射貫いてくる。きっといつもの朝陽ならば、艶のある黒髪の美丈夫に見つめられるだけで胸を躍らせていただろう。  だが、今日ばかりは違った。  「…………はいぃ?」  右の耳から入り、左の耳へと抜けていった言葉に、朝陽は呆然と立ち尽くす。  今、目の前でこちらに怪訝な視線を向けている男、天生隼士が交通事故に遭ったと連絡を受けたのは一時間前。それからすぐに勤務先の料理教室を飛び出し、息せき切らせて駆けてきたというのに、この男は何てことを言ってくれるのだ。 「オイ隼士、お前、いくら親友を安心させたいからって、冗談ぐらい選べ。朝陽の奴、笑ってねぇぞ」     
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