始まりと終わりと廻り合い

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ただ彼が使っている物は大抵あとから、皆使い始める。自分からしてみれば彼は流行の電波塔か受信塔だ、もしくは未来予知者だ。  「インストール終わるまでジュース飲む?ドクペしかないけど。」  「何でドクペだけだよ。」  「ドクペがあればタイムトラベルから異世界まで行けるぞ。」  「異世界はない。」  ツッコミを入れ適当な椅子に座りドクペを飲む。独特な味と風味だが乾いた喉には関係なく爽快感を与えてくれた。そしてついでに古いラノベを開いた。  「おっ前に勧めた90年代のSFじゃん。マキシム博士って奴が出てからが本番だぞ。何処で手にいれた?」  「あの図書館借りてきた。」  「ああ、あの図書館か。鍵渡されたんだっけ?吹田も誘うか?」  あの図書館。  その図書館とはある変わり者の資産家が作った図書館だ。何でも昔の日本で学生運動と呼ばれるデモが流行になったとき、当時の図書館もその流行に身を任せその学生運動寄りの本を貸し出していた。  ただ、その資産家、もといじいさんが変わり者で「子供たちに火炎瓶を投げさせる本等読ませぬ!そんな図書館は危険だ!」と言って作った図書館だ。勿論国営ではなく私財を投じて作った。だが皮肉なことにその図書館は肝心の子供たちの親にあそこの図書館は危ないと躾られ、当の子ども達から敬遠された。ある三人を除いて。  その三人とは自分、土岐 武と佐々木 忠、最後は小中同じ学校だった吹田 素子(すいた もとこ)だ。  「懐かしいよな。」
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