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悪魔との共同生活は楽しかった。妙に俗っぽいせいかいい友人そのものであった。
出かける時には「いってらっしゃ~い」と笑顔で言うのだ、その笑顔も悪魔の顔のせいで怖いが。留守番をしてくれるおかげで空き巣の多い昨今、最強のセキュリティと言えるだろう。そのセキュリティが作動して地獄の業火に焼かれた空き巣とかは幸運にもいない。そもそも火を吐けるかどうかすら疑問である。
食べ物も生きた家畜丸呑みとか珍虫奇蟲でも食べるかと思えば人間が食べるものでいいし食べても食べなくてもいいとの事だった。
「蒟蒻だけは嫌いだ、我輩の舌と同じ味がするからな」
蒟蒻は悪魔の舌と揶揄されていたが真実だったようだ。
悪魔の話は悪魔であるだけに荒唐無稽なものばかりであったが聞く分には面白かった、始めは話半分で聞いていたが、巨人族との戦いや世界が複数回滅亡しているなどと言った厨二心をくすぐるものばかりであったせいか回数を重ねるごとに「次の話は何だろう」と悪魔の話が楽しみになってきた。いつかは話が尽きるだろうと思いきや神話の時代からの話となるのでまだまだ尽きないらしい。
「かれこれ一ヶ月は話してるがまだプロローグすら終わってないぞ」
正直、自分の内定よりも悪魔の話の方が気になっていた。この一ヶ月何もしてないのかこの悪魔。無論、内定は貰えていない。一度、内定はどうなっているのか聞いてみた。
「貴様、その会社に入れる能力も無いのにその会社に入ろうなんて甘いぞ」
やっぱり俗っぽいなこの悪魔、とは思ったがぼくは何も言えなかった。
「カネを払えば入れてくれるし、卒業させてくれる大学の俗物なぞ企業は欲しがらんぞ」
「仕方ないじゃないか、入っちゃったんだし」
「これが甘えだと言うのだ、貴様はこうやって妥協し流されてきたてきたのだろう! その結果がこれだ! そんな事で内定が貰えると思っておるのか!」
心を抉るような事を言ってくるのは腐っても悪魔か。しかし正論故にぼくとしてはへこむことしか出来ない。しかしそれを捻じ曲げてでもどうにかするのが悪魔の契約では無いだろうか。
こうして外見の怖い悪魔に厳しい事を言われてきたせいか面接にもある程度の対処が出来るようになっていた。どんなに威圧感のある人事課だろうと悪魔に比べればピーマンやかぼちゃとそうそう変わらないというものだ。
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