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 その翌日も、翌々日も彼は玄関の前に居た。当然のように家に招き入れた。「まだ荷物を返してもらえないのか」と問うと「連絡も取れないんです」と困ったように笑った。昼間に来た方が居るのかもしれないけれど、仕事があるから駒井も昼には来れないのだという。  夜、玄関前で会い駒井を招き入れることがあたりまえになってきた。四日目には、駒井は晩御飯の材料を買ってくるようになった。朝と夜、駒井の手料理をご馳走になる。駒井の作る料理はどれも旨く、「相変わらず旨いな」というと「樹さんが生活力なさすぎなんっすよ」と言い返され、苦笑するだけでなにも言い返せなかった。  一宿一飯の礼が、一宿の礼になってしまった。せめて毎晩駒井の分の酒も買って帰るようにしたが、これにも「樹さん、飲みすぎです」と言われてしまい、立つ瀬もなかった。
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