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そう、わたしは浮いているのだ。かといって、いじめられているわけではない。何となく、みんなになじめないのだ。自分がどこかほかの人とちがうような、理由のない違和感が常につきまとっている。相手もきっと、それを感じるのだろう。だれといても、薄いベールが間にあるような、奇妙な感覚がつきまとう。自分の家族にさえ、それを感じる。
ただの考えすぎ、意識しすぎているだけ……なのかもしれない。でも、だれといても、距離を感じずにはいられない。相手がわたしには完全に心を許していないという気がする。
ただのひがみなのかもしれないが、理香とさくらといても、あのふたりはとても仲がよくて、何となくわたしとは距離があるように感じてしまう。実際、ふたりきりで出かけることもよくあるようだ。
わたしも気のおけない友人と、思いっきりばか笑いをしてみたい――
足に何かがふれた。そっと目を開けてみた。
え? 何これ?
カメが……わたしの足をつついている。
「これ、どういうこと?」
わたしは声にだして、ふたりにきいた。
「きゃー、おっきなカメ! こわーい!」
さくらがこわがって、理香にしがみついた。
「だいじょうぶだよ。しっしっ、あっちへ行け!」
理香が追いはらおうとしても、まったく動かない。相変わらず、わたしの足をつついている。痛くはないけど、わけがわからない。
「どっからきたんだろうね? 近くの川に住んでるカメかなー?」とさくら。
たしかに、この近所に川がある。このあたりはまだ畑や田んぼだらけで、川も、木々にとりかこまれた、うっそうとした雰囲気の場所だ。でも、近いとはいっても、カメが川から歩いてくるのはかなり大変だし、人目についたと思うのだが……。
そのとき、あることに気がついた。カッパの像を見あげてみると、いつも足もとにいるカメがいない。
だれかのいたずら?
もう一度、わたしの足をつついているカメを見た。
大きく見えるけど、近くにいるせい? もしかして、あの像のカメと同じくらいの大きさ? でも、まさかね?
「ほっといても、自分で帰れるでしょ。それより、おみくじ引きにいかない?」
理香はそう言うと、おみくじ売り場のほうへ歩いていった。
「さくらも行く!」
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