第1章

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 そう、わたしは浮いているのだ。かといって、いじめられているわけではない。何となく、みんなになじめないのだ。自分がどこかほかの人とちがうような、理由のない違和感が常につきまとっている。相手もきっと、それを感じるのだろう。だれといても、薄いベールが間にあるような、奇妙な感覚がつきまとう。自分の家族にさえ、それを感じる。  ただの考えすぎ、意識しすぎているだけ……なのかもしれない。でも、だれといても、距離を感じずにはいられない。相手がわたしには完全に心を許していないという気がする。  ただのひがみなのかもしれないが、理香とさくらといても、あのふたりはとても仲がよくて、何となくわたしとは距離があるように感じてしまう。実際、ふたりきりで出かけることもよくあるようだ。  わたしも気のおけない友人と、思いっきりばか笑いをしてみたい――  足に何かがふれた。そっと目を開けてみた。  え? 何これ?  カメが……わたしの足をつついている。 「これ、どういうこと?」  わたしは声にだして、ふたりにきいた。 「きゃー、おっきなカメ! こわーい!」  さくらがこわがって、理香にしがみついた。 「だいじょうぶだよ。しっしっ、あっちへ行け!」  理香が追いはらおうとしても、まったく動かない。相変わらず、わたしの足をつついている。痛くはないけど、わけがわからない。 「どっからきたんだろうね? 近くの川に住んでるカメかなー?」とさくら。  たしかに、この近所に川がある。このあたりはまだ畑や田んぼだらけで、川も、木々にとりかこまれた、うっそうとした雰囲気の場所だ。でも、近いとはいっても、カメが川から歩いてくるのはかなり大変だし、人目についたと思うのだが……。  そのとき、あることに気がついた。カッパの像を見あげてみると、いつも足もとにいるカメがいない。  だれかのいたずら?  もう一度、わたしの足をつついているカメを見た。  大きく見えるけど、近くにいるせい? もしかして、あの像のカメと同じくらいの大きさ? でも、まさかね? 「ほっといても、自分で帰れるでしょ。それより、おみくじ引きにいかない?」  理香はそう言うと、おみくじ売り場のほうへ歩いていった。 「さくらも行く!」
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