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「続きまして、真琴さんのご入場でございます」
扉の前。こうして家族が三人、並ぶのって久しぶりね。なんだかそれだけで泣けてきちゃうわ。
真琴の隣りでお父さんは左手の握り拳をおへその辺に置いて、右手は白い手袋を持って、そのまま下ろしていました。言われた通りにできてるみたいね。ヨシヨシ。それにしても、いくら真琴があなたのお髭が好きだからって、人様の前に出る今日ぐらいはきちんと剃っても良かったんじゃありません?
真琴はお父さんが作った左手の輪、肘の辺りにそっと手を添えました。そうそう、指を添える感じね。いいじゃないの。あんまりしっかり腕を組むと「たくましい花嫁さんだな!」なんて笑われちゃうものね。
扉の前に来ると真琴が笑顔になりました。さっきまでの緊張がほぐれて、これから交わす、ひとつひとつの約束をしっかりしようという心構えができたみたい。さすがワタシの娘。度胸が据わってるわ。あとは楽しむだけ。リハーサルでも司会者さんがそう言ってたわ。真琴がゆっくり歩けばそれだけお客様にとってシャッターチャンスが増えるだけだから、焦らなくていい、安心してください。むしろ笑顔でお客様にお応えくださいって。
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