すっぴんハート

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「誰の話?」 グラウンドから走ってきた誰かが、あいつらに声をかける。 顔なんか見なくても、すぐにわかった。 ……最悪。 今すぐここから逃げ出したい。 「哲哉、ケガ治ったのかよ。 もう部活に復帰?」 「ランニングだけ混ざって来た。 体なまるし。 ほんとは筋トレも参加したかったけど、監督が帰れってさ。 『お前のせいでブラック部活認定されたらクビになる』って」 トレーニングシューズから 普通のスニーカーに履き替えているのが 物音でわかる。 「それよりさっきの話。 補習しても無駄なバカって、誰のことだよ」 「野田だよ。 そういや哲哉も南中だったよな。 あいつ、昔からあんなイタかったの?」 「いや、中学からじゃないよ。 あいつのバカは生まれつき」 笑いながら言う哲哉の言葉に、 二人が手を叩いて爆笑する。 ぎゅっとくちびるを噛んで、 握った拳で頬っぺたをぬぐう。 弱虫でも泣き虫でも、もう1秒だってこの場所にいたくなかった。 上履きのまま帰ろうとしたとき 哲哉の呟きに、足が止まった。 「昔からバカでどうしようもない奴だけどさ。 前にそれ、うちの母ちゃんに言ったら ぶっ飛ばされたんだよ」 「マジで? 哲哉の母ちゃん超強いな。 女の子の悪口言うな!てか?」 「いや、そうじゃなくて。 『あの子は、あんた達みたいに 自分のことだけやってればいいわけじやないんだから!』って 般若みてーな顔で。チビるかと思った。 つーかさぁ……」
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