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そんなふうに言われたら、
出ていかないわけにはいかない。
勇気を出して、下足箱の反対側に回り込む。
ユニフォームにジャージを羽織った哲哉と、
完全に縮こまってる男子2名の視線が
あたしに向けられる。
何か言わなきゃ。
そう思えば思うほど、頭が真っ白になって
結局あたしの口から出たのは
「……ばーか。
おたんこなす!」
という、気の抜けた言葉。
それでも二人を怯えさせるのには十分だったみたいだ。
真っ青な顔で、時代劇で親分を成敗された小悪党みたいに、一目散に逃げて行った。
暗くなりかけた下足箱に取り残されたのは、あたしと哲哉だけ。
気まずい沈黙のあと、哲哉が呆れたように言う。
「……なんだよ、おたんこなす、って」
「うるさいデカ哲」
「普段悪口言い慣れてない奴って
こういうとき使えねーな。
少しはあいつらのスキル見習えよ」
「そんなスキルいらないし!
てゆーか、なんであたしがいること……」
「朝も言っただろ。
お前、香水つけすぎなんだよ」
犬か!
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