すっぴんハート

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立っていたのは、隣の家の平田哲哉。 相変わらずデカい。無駄にデカい。 昔はクラスで2番目にチビだったくせに。 小中高とずっと腐れ縁で、こいつはずっと野球部で、いつもエースのピッチャーで。 だからいつもジャージで坊主で 死ぬほどダサいくせに、 女子には結構モテるところがむかつく。 「てっちゃん、ちぃーす」 ゆーたは哲哉とパシッと手を合わせると、 ランドセルの蓋をパカパカ言わせながら 先に坂道を駆けていく。 「ゆーた、ランドセル!ちゃんと閉めな!」 「うるせーブス!!」 ……今日の夕飯のハンバーグ、あいつだけチーズ抜きにしてやる。 哲哉が近付くと、えまはもじもじしながらあたしの後ろに隠れた。 たぶん、電信柱みたいな哲哉が怖いんだと思う。 「お前、今日もジャージかよ。 部活もやってないくせに、真似すんなよな」 日に焼けた顔で笑うから、綺麗に並んだ歯がやけに白く見える。爽やかだなんて絶対、思わないし。 「あんたと一緒にしないでよ!」 インスタで人気の読者モデル、ベッキーとお揃いのブランドのジャージを こいつのくたくたの本気ジャージの仲間にされたくない。 くるぶしまでの短いライン入りのソックスと、 スポーツブランドのピンクのデカリュックで、今日のコーデも完璧だ。 「そんな変な格好ばっかしてるから 友達できないんじゃねぇ?」  「うるさいチビ哲!」 思わず言い返すと、哲哉はあたしを見下ろしながら偉そうに笑った。 ……しくった。つい昔のアダ名で呼んじゃった。
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