第1章

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 よろしいのですか、ローレン子爵令嬢様。  ここ、お店の中ですよ。そして、あなたは今結構注目されています。  お気づきでないようですが。  ご愁傷さまです。  「可笑しいと思ったのよ。だって、侍女服を着ている令嬢がいるなんて」  「はぁ」  「ねぇ、そこ退いてくださらない。  たかが使用人如きが貴族と同じ席に着こうなんて失礼ではありませんか」  「失礼なのは君の方だよ、ミリアーノ嬢。  彼女は僕の連れだ、君にバカにされる筋合いはない。  それに貴族がそんなに偉いの?  偉そうにしているけど子爵や男爵位の生活なんてほとんど変わらないからね」  「なっ、何を言っていますの、クリス様。  この女に誑かされて、頭が茹で上がっていますの!そのような」  「喧しいっ!」  グワーン  うわぁ、痛そう。  「グエン」  グエン様は後ろからローレン子爵令嬢様の頭をフライパンで叩きました。  あの、よろしいのでしょうか?  グエン様は確か男爵位なのでは?こんなことをしてはマズいのでは?  「何をなさいますの!」  「黙れっ!店で騒ぐな!  あと、平民をバカにしたような口を叩いているけどな、俺の店はその平民を的にした店だ。  ここにいるのは全員、平民だ」  そこで初めてローレン子爵令嬢様は自分が周りの人間から睨まれていることに気づいたのです。  グロリア様もそうだったのですが、貴族の令嬢って結構鈍いんですかね?  「覚えておきなさいよっ」と悪役じみたセリフを言ってローレン子爵令嬢は店から出て行きました。  それを見たグエン様も何事もなかったかのようにフライパンを返しに厨房へ行ってしまいました。  「ごめんね、ルル。不快な思いをさせてしまって」  「いいえ、私のような使用人と一緒に居れば当然かと」  「当然じゃないよ!ルルはとても素敵な女性だよ」  「・・・・・・そ、それは、ありがとうございます」  何でしょう、この方。  私をドキドキで殺してしまいたいのでしょうか。  「あ、あの、ルル」  「はい」  「さっき言ったように、子爵位も男爵位も平民と変わらないんだ。  結婚とかもしなければいけないけど、無理に貴族とする必要はないんだ」  「?そうなんですか。それは知りませんでした」  「大抵は上流貴族との関係を持ちたいかったり、自分の家の利益になる家との繋がりを欲する為に貴族同士で結婚をするんだ。
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