第1章

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 でも、もう一度強めの溜息を吐く母の機嫌をこれ以上損ねるわけにはいかず、私は中断していた皿洗いを開始した。  お風呂は由利、母の順で入るのでその間に自分の宿題をしてしまう。  居間のテーブルの上に置いてあった由利の宿題に一度視線を向けたが見なかったことにした。  由利の入浴時間は一時間以上かかる。  だから由利がお風呂に入っている間に父が帰ってくるので私は冷えた煮物とみそ汁を温めて父に出す。  やっと由利が上がり、母が入っている間に父は食事をすませるので私はもう一度皿洗いをした。  「お風呂、次に入る?」  「柚利愛、まだ入ってないんだろ。俺は最後でいい」  「分かった」  母が上がり、先にお風呂を頂く。  全ての家事を終了して、私は漸く自分の時間を得られる。  さっとお風呂を上がって部屋でゆっくりとした時間を過ごしていると、もうそろそろ寝ようかと言う時間になって由利が宿題を持って私の部屋に来た。  ニコニコ嬉しそうに笑う由利を見て私のストレスゲージが一気に跳ね上がる。  そんなこに気づきもしない由利は私の前に理科の教科書とノートを差し出す。  「やって」  「自分の宿題でしょ。自分でしなよ」  「だって、お母さんが柚利愛にやってもらえって」  「そういう問題じゃないでしょ」  私がそう言うと途端に機嫌を悪くした由利は宿題を持って私の部屋を出て行った。  それから直ぐ、母を連れた由利がやって来た。  母はまさに鬼の形相だ。  「どうして、あんたにはそう思いやりがないの」  母は由利の持っていた教科書の角で私の頭を叩いた。  「っ」  かなり痛かった。  「我儘ばかり言っていないで、少しは親の言うことを聞きなさい」  「・・・・はい」  結局、私は母の言った通り由利の宿題をすることになった。  結果が同じなら最初っから逆らわなければ良かった。  そうすればこんなに痛い思いをする必要もなかったし、ストレスだって最低限ですんだのだ。  これは完全に私の判断ミスなのかな。 第?章 6  翌日、私は校門の前で先生に止められた。  校門の所では抜き打ちで頭髪服装検査がされていた。  「神山さん、私は昨日、何て言ったか覚えていますか?」  「地毛を染めろと言われました」  「なぜ言われたことができないんですか?」  私は先生に証明書を見せた。  勿論、無駄なことだって分かっている。
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