第1章

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 それは虐待と一緒ですよ」と言って校長先生は校舎の中に戻って行った。  先生は唇を噛み締めながら私を睨みつけたが、校長先生に注意された為、それ以上は何も言ってこなかった。  私も何事もなかったかのように校舎の中へ入った。 第?章 7  学校での私は相変わらずだった。  落書きをされ、菊の花が飾られた机が私の机だ。  引き出しには大量のゴミが入っている。  何が面白いのか、色々されている机に辿り着いた私を見て私を虐めているグループはクスクスと笑っている。  そうでない生徒は火の粉が己に飛んでこないようにひたすら関係のないふりをする。  それは当然のことだ。  誰だって責められない。  みんな我が身が可愛いのだ。  きっと立場が違ったら私だって関わろうとしないように全てに目を閉じ、何事もなかったかのように過ごすだろう。  世界はいつだって誰かを犠牲にして成り立つ平穏に満ちているのだ。  ああ、なんてくだらない世界だろう。 ◇◇◇  私は実は小学生の頃からピアノを習っている。  習い事に関しては少し厳しいけど、頼めば何とか習わせてくれた。  どういう心情なのかは分からない。  ただ、邪魔な娘が少しでも家を空けてくれたらいいと思って許可してくれたのかもしれない。  ピアノは弾き手を映す鏡だと思う。  苛立った心で引けば、自然と音は荒くなる。  「コンクールですか?」  「そう。出てみない?神山さんなら良い線行くと思うんだけど。  参加費は五〇〇〇円なんだけど、自分を試す良い機会でもあるし、そういう経験をしてみるのも良いんじゃないかなって思うの。どうかな?」  参加費は毎月貰っているお小遣いやらお年玉やらを貯めているので問題はない。  人前に出て、お客さんや審査員の反応は怖いけど、興味はある。  何よりも好きなピアノを披露できる場はそうそうない。  「そうですね。出てみようと思います」  「そう。良かった。じゃあ、今日は選曲をして、来週からコンクールに向けての練習を始めましょうか」  「はい。よろしくおねがいします」  ピアノの先生は私を偏見の目で見ない珍しい人  そんな先生の提案だからこそ私は受けてみたいと余計に強く思った。  それに、もしかしたらコンクールの成績次第では両親が褒めてくれるかもしれないという打算もあった。  バカでしょう。  心ってバカなの。  頭は賢いからちょんと分かっているの。
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