第1章

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 私の言葉に怒るなり肯定するなりすればいい。  人間というものはそういうものでしょう。  「ごめん、そういうちもりで言ったわけじゃないんだ。  俺はただ君と仲良くしたくって」  「・・・・どうして?」  そんなことを言ってくれた人間は初めてだった。  「君、ピアノのコンクールに出ていたろ。  俺の姉貴が実はそのコンクールで準優勝だったんだ」  「・・・・そう」  「君のピアノ、凄かったよ。何て言うか、心が震えた。  とても感動して、君みたいな子と仲良くなりたいって思ったんだ」  それは本心だろうか?  「あなた、私のこと何も知らないの?  私なんかと構うと、あなたも群れから外れることになるわよ」  何も分かっていない顔をする黒川正人を無視して私はその場を去った。  これ以上、この訳の分からない男に付き合うのはごめんだ。 第?章 9  「おはよう、神山さん」  翌日、学校に行くと黒川正人がニコニコしながら私に話しかけて来た。  周りに居た人は驚いた顔をしていた。  私も驚いた。  昨日の彼の言葉を私は信じた訳じゃない。  だから昨日と変わらない今日がやって来ると思った。  「・・・・・おはよう」  挨拶を返すと黒川正人はとても嬉しそうに笑った。  周囲の人間は何が起きたのか理解できずに固まっている。  私はいたたまれず、足早に教室の中に入った。  するとなぜか黒川正人も私の後について教室へ入る。  「神山さん、もしかしてとは思っていたけど俺が同じクラスだって知らなかった」  「・・・・」  図星なので何も言えなかった。  すると黒川正人は「ひどいな」と全くそんなことを思っていない顔で言う。  何が楽しいのか彼は授業が始まるまでずっと私に話しかけていた。  私は特に話す内容もないので、話題を振られても困る。  何も話せない私と居て何がそんなに楽しいのかひたすら黒川正人は話し続けた。  それは周りから見たらとても異様な光景だった。  結局、黒川正人は休み時間全部を使って私の所に来た。  おかげで今日一日は暴力を振られることもなくすんだ。  そんな日が何日も続いた。  正直、どうしていいか分からない。  こういう人間は初めてなので対処に困る。  「ねぇ、黒川君と付き合っているの?」  ある日、由利にそんな質問をされた。  「付き合ってない」  「でも学校で噂になってるよ」  それは初耳だ。
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