第1章

6/101
前へ
/101ページ
次へ
 勇気を出して一歩を踏み込まないと。  友達だってできないぞ。  神山だっていつまでも一人でいるのは嫌だろ」  「でも先生、誰も私を仲間に入れてくれません。  私が人と違うから」  「それはお前が壁を作っているからだろ。  大丈夫、笑って『あそぼ』と誘えばみんなお前と友達になってくれるよ」  「でも」  「神山、『でも、でも』と言っていたって何も始まらないだろ」  最後は少し怒り気味で先生が言った。  だから、それ以上は何も言えなかった。  ・・・・でも先生、私は何度も自分から『友達になって』って言ったんだよ。  だけど、誰も私を仲間に入れてくれなかった。 ◇◇◇  私は変わらずみんなから虐めを受けている。  女子からはバケツの水をかけられたこともあった。  「何だ、神山。一人だけ雨に降られた格好をして。  さっさと体育着に着替えて来い」  「・・・・・はい」  晴天の日に私だけびしょ濡れなんておかしいだろう。  先生は私が虐められているのを知っている。  そんな私が晴天にこんなに濡れているんだ。  何をされたかなんて一目瞭然だろう。  だけど、先生は私を注意するだけ。  先生に注意をされた私をみんな指さして笑っていた。  先生は気づかないふりをして黒板に授業で教えて内容を書いていた。 ◇◇◇  『神山さんは積極性がなく、クラスで浮いた存在になっています。  もう少し、積極的にコミュニケーションを取れるようになるといいでしょう。  勉強は努力家で成績も良いのですが、学校とはそれ以外を学ぶ場所なので神山さんには友人の素晴らしさを学んでいけたら良いと思います』  私の通知表  先生のコメントの欄にはそんなことが書かれていた。  「私、今回あまり成績が良くない」  由利は自分の通知表を見てがっかりしていた。  「そんなことないよ。よく頑張ってるじゃん」  つかさずお母さんが褒めた。  通知表は五段階評価  由利は一と二しかない。  だって、テスト前に勉強しているところなんて見たことがないもん。  当然の結果だと思う。  「でも、柚利愛の方が全然良いじゃん」  どうしてそういうことを言うのだろう。  私はため息をつきたくなった。  「あの子はいいの。由利がちゃんと頑張っているの、お母さんが分かっているから」  何を見て『頑張っている』と言っているのだろう。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加