第1章

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 私は時計で時間を確認してまず洗濯物から始める。  「ねぇねぇ」  「何?」  一緒に帰って来た由利が洗濯をしている私の元へやって来た。  「髪染めないの?」  私がわざわざ部屋のゴミ箱に捨てた白髪染めを持っていた。  「どうして染めないといけないの?」  「だってその髪の色やっぱり変だし、それに先生に怒られるよ」  「私には地毛だって証明書があるっ!」  「私に怒らないでよ」  由利は不機嫌な顔をして自分の部屋に戻って行った。  何で由利が不機嫌になるんだと思いながら私は収まらない怒りを溜息と共に吐き出して洗濯機のスイッチを押した。  洗濯が終わるまでに晩御飯の準備をする為に台所に行った。  その際、居間を通ったのだが、居間のテーブルには私が捨てて、由利がわざわざ持って来た白髪染めが置いてあった。  私はその白髪染めを取り、怒りをぶつけるようにゴミ箱の中に投げ捨てた。  バコンっ  音を立てて、ゴミ箱がぐわんぐわん揺れたが、何とか踏み止まってくれて、倒れずにすんだ。  私はもう一度溜息を吐いて、晩御飯の準備を始めた。  今日のご飯は煮物とみそ汁、それに焼き魚にした。  ご飯を作り、洗濯物を干し、お風呂の準備を始める。  そうしていると、母が帰って来た。  食事は一八時から。  私は一八時になる前に居間や廊下に掃除機をかけて、次にゴミ箱のゴミを集めてそれを明日、学校に行く前に出す為に玄関に置いておく。  それが全て終わって漸く、食事の時間になる。  ご飯を食べる時間は決まっているが由利は呼ばないと部屋から出て来ない。  面倒だと思いながらも私は由利を大声で呼ぶ。  それを不機嫌顔の由利が降りて来てテーブルについた。  私はテーブルについている二人の為にご飯とみそ汁をお茶碗によそぎ、テーブルに置く。  誰も動かない。  食事を作るのもそれをテーブルの上に運ぶのも全て私の仕事になっている。  「えぇ、今日煮物なの。私、煮物あまり好きじゃない」  それは初耳だ。  だから無視しておく。  「しかも大根入ってるじゃん」  「嫌なら食べなくてもいい」  「誰もそんなこと言ってないじゃんっ!何で、そんなこと言うの?」  「人参、大根、茄子、玉ねぎ、長ネギの嫌いな由利に合わせていたら何も作れなくなる」  「大根は下ろせば食べれる。茄子だって焼き茄子なら食べれる」  基本的に私は茄子は焼いているけど。
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