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「あの子のせいで私は色々と苦労させられてるんです。髪も先生に注意されているのに染めないから先生に私が怒られるし。アルビノだからって自分は特別みただって勘違いして一匹狼なんか決め込んで」
「君は本当に何も知らないんだね」
「何がです?」
呆れたように店長は溜息をついた。その姿が柚利愛と重なって余計に私を苛立たせた。
「彼女はアルビノでも何でもない。普通の子だよ。もし特別だと言うのなら、それは周囲がそうさせただけにすぎない」
「責任転換ですか?」
「本当に頭の悪い女だ」
一瞬で口調も雰囲気も変わった。
血の気が一気に引いて、膝がガクガクと震え出した。
隣に居た希空も恐怖のあまり私の腕に抱き着く。
逃げなければと本能が言っているのに体は縫い付けられたようにそこから動かない。
「自分の都合でしか物事を考えられないのか?さすがは両親に甘やかされて育っただけはあるな。
だいたい、柚利愛から散々甘い蜜を吸っておいて随分な言い草だ」
「な、何のことですか?」
「それはとぼけているのか?それとも本当に分からないのか?」
「・・・・・」
堪えられない私に店長は深い溜息をつく。
一体何だと言うのだ。
「お前は年頃の割には金をよく使う。親の小遣いだけでは足りないだろう。それでもお前がバイトをする必要がないほどお金に困らないのは柚利愛から巻き上げてるからだろ」
「そ、そんなの」
「知らないなんて言わせない。目の前で母親に金を徴収され、それがお前に手に渡るのをお前はその目で見ているんだからな。
言っておくけど俺にとって柚利愛が最優先事項だ。
お前らのことなんかどうでもいいし、お前らが柚利愛を傷つけると言うのならその時は容赦はしない。分ったな」
私は無言で頷くしかなかった。
私が頷くのを見ると店長は用は済んだとばかりに仕事に戻って行った。
そこで漸く圧迫感から解放された私と希空は逃げるようにシャノワールを出る。
「由利、何をしているの?」
そこで柚利愛に会った。どうやら今からバイトのようだ。
「・・・・・別に、何も」
恐怖のせいでまだ口が上手く動かない。それでも、それだけは言うことができて私は希空とそのままそこを離れた。
背後から私達を訝し気に見る柚利愛の視線を感じたが、振り返り、事情を説明するだけの余裕はなかった。
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