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「俺はお前。疲れて帰ってるのに。お前達の為にいつも頑張って働いてるんのにそこまでこき使うなよ」
「私だってアルバイトしてる」
「お前は自分の小遣い稼ぎの為だろ。生活を支える為に働いたらそれがどれけ大変か、お前も働きだしたら分かる。飽きたら直ぐに辞められるアルバイトとは違うんだぞ」
「私はそんないい加減な気持ちで働いているわけじゃないっ!」
いつだってそうだ。
お母さんもお父さんにも由利も「自分の方が大変。自分が一番苦労している」と言う。自分が、自分が。そればっかりだ。そして「お前は」と貶める。苦労知らずの子供。それが私の立場。
くだらない。
第?章
6.母親side
「由利ちゃんだったかしら、アルビノともう一人の娘」
「え、ええ」
アルビノともう一人の娘
それが親戚や近所が私の娘を呼ぶときの呼び方だ。
「最近、見かけないけどどうしたの?」
「学校も休みがちだとか。どうかしたんですか?」
声色、口調はこちらを本気で心配している優しい近所の人達に見える。
でも私に向ける目や表情は真逆だ。
彼女達はいつも探している。誰かを陥れるための話題を。
暇な主婦のくだらない娯楽。
私は彼女達と違って働いているから夫におんぶに抱っこなんて情けない生き方はしない。
「ええ。不調が続いてまして。何分、苦労が耐えないので」
「まぁ!?そうなんですか?」
「娘さんに苦労をかけるものではないわよ」
「そうですね。でも我が家には毛色の違う猫が一匹居ますから。こちらが気を遣っても周囲の環境がそれを許さないのでしょう」
見に覚えのある奥様方は気まずそうに顔を逸らした。
けれど、一人だけ挑戦的に睨み付ける人がいた。
「あら、でもこんな噂もあるのよ。みなさんご存じ?
由利ちゃんはアルビノの子からお金を巻き上げていると」
「そんなのはデマです。由利はどこに出しても恥ずかしくない。とても良い子です!」
「そうねぇ。アルビノの子の方は時々会えば挨拶をする程度。まぁ、接客のバイトをしているだけあって礼儀正しい子よね。
由利ちゃんもそれに負けず劣らずといったところかしら?大きく見積もってだけれど。
でも言いますでしょ。火のないところに煙は立たないって。ねぇ、みなさん。どう思われますか?」
今度は私の方が黙る番だった。
柚利愛はバイトをしているんだからそれを生計に立てるのは当然だ。
今日まで育てた恩だってある。
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