告白

1/17
前へ
/183ページ
次へ

告白

1 「俺、人を見殺しにした事あるんだ」  友人の遼一がそう言ってきたのは、学校の帰り道での事だった。  新幹線の高架下にぽつりとある、公園のような空き地で、僕達は夕焼けを眺めている最中だった。  と、カッコつけてみたけれど、遼一が煙草を吸いたいと言い出したから、そこにいるだけだ。  遼一は煙をふかしながら、さっきの言葉を、まるで「今日の晩飯はカレーなんだ」と言うときみたいな軽い口調で言ったものだから、僕は「ふーん」と聞き流すところだった。 「ふ」と言いかけて、遼一が何気なく放った言葉の意味に気付く。飲んでいたコーラを、危うく遼一めがけて吐き出しそうになった。 「冗談きついな。おもしろくも何ともない」  僕は思いきりしかめっ面をして見せた。 「マジバナ」  遼一は、ヘアワックスで立たせた髪をいじくりながら、早口にそう言った。 「本当の話」という言葉を、ご年配の方々が聞いたら「日本語を喋れ」と憤慨しそうな単語で縮めた彼の顔を、僕は横目で盗み見た。 「お前も知ってるだろ?一年前に、駅前通りの路地裏で起きた殺人事件」 「う、うん」  頷きながら、僕は一年前に地元を震撼させた、ある事件の事を思い出していた。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加