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そんな不可解な事件の一部に、遼一は関与したと言っているのだ。
冗談だと軽くあしらいたい気持ちと、もしそれが本当だったらどうしようと思う自分がいる。
僕がごくりと唾を飲み込んで黙っていると、ほどなくして遼一が再び話し始めた。
「夜中の一時前だったかなぁ、俺、たまたま事件現場を通ったんだ。ダチとつるんでてさ、酒飲んで、ほろ酔い気分で歩いてたんだ」
足取りもおぼつかないまま歩く遼一の姿を、僕はイメージする。
目の前に具現化出来そうなほど、鮮明にその光景が頭の中で浮かんだ。
遼一は未成年だというのに、酒は飲むわ煙草は吸うわで、健全な少年だとは、口が裂けても言えない。
みんなが言うには、見た目も怖いらしいが、幼い頃の彼をよく知っている僕には、彼はただの粋がっているガキにしか見えない。
「あの通りをボーッと歩いてたら、街灯に照らされて、何か黒いものが見えたんだよ。それで、どうせゴミか何かが散乱してんだろなって思って無視して通り過ぎようとしたんだけど、それに近付いていくにつれて、荒い息遣いと小さな呻き声が聞こえてきた」
遼一はいったん言葉を切って、僕の顔を見た。
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