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僕は視線を感じたが、足元でうろうろしている小さな虫を見たまま、顔は上げなかった。
「俺、おそるおそるその影に近付いていったんだ。それで、人が倒れているって分かって、立ち止まった。……その人、あお向けに倒れてて、脇腹を両手で抑えながらすっげぇ苦しそうに喘いでた。暗闇でもその人が血まみれなのが分かって、傷口を抑えている手の間からもどんどん血が流れていたのが見えた。倒れている場所に、水溜まりみたいに血が溜まっていたんだ」
遼一は煙草を足で揉み消しながら、顔をしかめた。心なしか、彼の顔色が悪い気がする。
話を聞いている僕でさえ、いい気はしないのだから、その光景を思い出して話す遼一は、さぞかし気分が悪いだろう。
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