[Youth is not over]

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むしろモロに上野に近づいている。つまり、つまり、繰り返しアピールするが上野からはまだ出ていない。住処は変わったが、台東区は上野という街に居るという事は変わらない。本当は住みたい街ランキング・ナンバーワンの常連である吉祥寺辺りに住みたかったのに、どうしてそんな中途半端にも上野界隈をウロウロしているのか。昭和の風情があるっぽい所は気に入っていたが、それにしてもそれが決定打とは思えない。  とにかく、変わってないなあ、というのが率直な印象。四年間という期間。ワールド・カップ、オリンピック……後はなんだろう。まあ、世界的なスポーツの祭典のターム分の時間が過ぎていったというのに、俺が予定していたささやかな青写真は描けなかった。せいぜい手持ちの電話がPHSから、普通の携帯電話にモデルチェンジした事ぐらい。それと健康面ではなく経済的事情で一日四本と決めていた煙草の本数が六本に増えた事か。それらが人生変転の証左。身の周り半径三メートル的な幸せ。小規模な話である。 以上のように四年前の当時の人生予報ははずれてしまった。だが、予報の天気がはずれて逆に蒼穹が広がるという場合もあるのでは? と俺の内に潜む静止気象衛星ならぬ精神気性衛星・ひまわりの精度を疑う事を期待。  秋葉原の駅から降りて、街の静電気、もとい静電波をピリリ、と感じた頃、俺の携帯電話の着メロが鳴った。そのメロディはバッハのトッカータとフーガニ短調。このサウンドは……あの婦女子か。不用意に焦って電話に出る俺がいたりする。 「もしもーし」 【ひでなあ、森沢!】     
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