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婦女子、詮ずる所、電話の相手である小野寺真琴(おのでらまこと)の、変形したイントネーションの声が、俺の鼓膜を僅かに震わせた。
「何だよ、マコっちゃん突然」
【突然じゃないわよお、中島賞のこと聞いたんだからね】
今度の彼女の声は、標準語と呼ばれるそのアクセントに、おおよそ符号していた。
中島賞。それはあたら夭折した「山月記」や「李陵」の作者の中島敦を偲んで設立した、十代から三十代までの作家を対象とした文学賞の名称である。
俺はしがない才能を疲弊させながら、小説を書いている作家、もどきのような輩。姓は森沢(もりさわ)、名は和馬(かずま)。自称・小説家。それでいて何とかメシだけは副業、つまりアルバイトだが、それを兼ねてギリギリ食べていっている。収入的には副業が本業を上回る事が多々あるが。とはいえ、近頃件(くだん)の中島賞に俺はノミネートされたのである。
【森沢が中島賞の候補に入っているなんて、あたしおんべねぁ……知らなかったんだから!】
彼女はうっかり出る方言を訂正しながら、忙しく俺に怒鳴った。
「そ、そんな怒るなよ。俺だって一昨日に知ったばっかなんだからさ。今度マコっちゃんに会った時に言おうと思って……つーか、マコっちゃんはいつその事知ったの?」
【昨日の夜、伊達さんから聞いたの】
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