消失の春

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 全てが壊れたのは雪のちらつく二月。凍てつくような夜でした。  その日、私は珍しくサークルの飲み会に参加していました。明日は朝からバイトだからと一次会で抜け、夜道を歩いている時にその電話がかかって来たのです。  ディスプレイにはサクヤくんの名前が表示されていました。想い人からの初めての着信に、喜びよりも引っ掛かりを感じたまま携帯を耳に当てます。  電話の向こうは無音でした。 ……サクヤくん?  呼びかけると、空気が微かに震えたのが伝わってきました。 ……カオリが―― ……え? ……カオリが死んだ  声が揺れて、そのまま嗚咽が続きます。私は呆然とその場に立ち尽くすしかありませんでした。
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