消失の春

　タイムリミットは四十九日と彼女は言いました。最愛の人を失ってまだ一月も経たないのですから、彼でなくとも死に惹かれてしまうでしょう。残りの数週間、とりあえず彼の気持ちが落ち着いてからまた考えようというのが、一晩かけて辿り着いた答えでした。
　その日から、私は夕方になると彼の家を訪れるようになりました。虚ろな人形に魂を吹き込むように色々と話しかけ、夕食を共にし、家事を代行しました。その分自分の部屋の方がほったらかしになって、ますます荒れ果ててしまいましたが。
　忙しく動き回る私を、彼は黙って見つめているだけでした。