消失の春

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 全てを話し終えた私に、彼は一言だけ、ありがとうと言いました。 ……信じてくれるの ……こういう時に、嘘をつく人じゃないでしょ  彼は大事そうにそれを握りこんで、口元をふわりと解きました。 ……行くの、カオリの所に ……うん ……どうしても行ってしまうの ……ごめん。一人にしてしまうね  茶色がかった瞳は凪いで、そこに迷いはありませんでした。
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