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そんな毎日を送っていたある夜のことです。夢にクラスメイトの弟が出てきました。当時変わり者と敬遠されていた私にとって、その子のお姉さんは数少ない友人の一人でした。
弟さんはその時まだ六歳ほどでしたが、病気で長いこと入院していました。私も何度かお見舞いに付き添ったのですが、離れて暮らしているせいか終始お姉さんにべったりで、仲がいいなと微笑ましく思ったのを覚えています。
だから四年生になってすぐの頃、その子が亡くなったという知らせを受けた時は随分とショックでした。
夢の中で弟さんは泣いていました。いつもの如く、何でも言ってと安請け合いをする私に、彼は何かを押しつけてきました。これは初めてのパターンです。視線を落とせば、私の手には銀色のケースが鈍く光っていました。目の高さまで持ち上げると、中でカラカラと音がします。
……これをお姉ちゃんに渡して
見上げる瞳は涙の中にキラキラと光をたたえて、ますます澄んだ色をしていました。
……これは何?
……お姉ちゃんが僕の所に来られるお薬。これを飲めば、一緒に生まれ変わってまた会えるんだって
何も言えないでいる私に、弟さんはますます泣いて、胸元に縋ってきます。
……お願い、早く渡して。じゃないと僕、一人ぼっちになっちゃうよ。ねえ、早く、お願い
その瞬間、私は目を覚ましました。金色の光が柔らかなベールのように降り注ぐ、恐ろしいほど穏やかな朝でした。最後に聞いた叫びがまだ耳にこびり付いています。普通なら不思議な夢だったで終わりでしょう。けれど私には何年も幽霊の声を聞いてきた実績がありました。そして案の定、枕元には弟さんに渡されたピルケースが置かれてあったのです。
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