消失の春

4/20
前へ
/20ページ
次へ
 馬鹿な私は教室に入るなり友人を呼び出して、今朝の夢の顛末をそのまま話しました。弟さんの言葉に涙した友人は何の疑いもなくピルケースを受け取りました。思い返せば身内が死んでまだ一ヶ月と少し、十歳という夢見がちな年頃も相まって、その不幸は起こってしまったのでしょう。  血相を変えたその子の両親が家に怒鳴り込んできたのは、その晩のことでした。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加