残念な生き物へ

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残念な生き物へ

  時間すらも緩慢になったような麗らかな春の昼下がり、猫である私はいつも通り公園のベンチで、人間の友人の膝の上でまどろんでいた。    こいつを見ているとつくづく思うのだ。人間とは残念な生き物であると。  男でありながら華奢な彼の膝は決して座り心地の良いものではない。思わず無意識に彼のズボンで爪を研ごうものなら、彼は飛び上がり、その拍子に私は空高く舞うであろう。  それでも、彼は私を撫でるのが上手い。もしかしたら、同じような小動物を飼っているのかもしれない。 彼は平日この時間になるとふらふらっとここに来て、私を抱くと、このベンチに座りぼぅっとする。時々本を読んだりしているが、基本的には私を撫でながら口を開けたまま(時によだれをたらしながら)ぼぅっと空を眺めていた。大学生というものはよっぽど暇なのらしい。              ただ最近は不意に、全く別の方を見る時がある。 視線の先、斜め前のベンチには、彼と同い年ほどの女が、涼しげに本を読んでいる。 これほど近くで彼を見ていればわかる。彼は彼女を慕っているのだ。     
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