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「そうか! 良かったなぁ暁人~。
父さん早く帰って来るぞ~。 お父さんに会う前に綺麗になろうなぁ」
それは僕を疎ましいなど、微塵も思っていないような言い方で、壁向こうの見えないお義父さんを凝視した。
「おまえ、ちゃんと修蔵君のお世話もしてるか? わざわざここに来てくれてるのだから、修蔵君が窮屈に思わないようにしてやれよ」
「それなら、お父さんも恥ずかしがってないで、もっと話しかけたらいいじゃない」
「う、ゥン……どうしても照れちゃうんだよなぁ……」
きっと今の僕の顔は、真っ赤になっているだろう。たまちゃんとお義父さんの優しさを直に感じて、胸の奥がむず痒い。
「ほら、暁人出すぞ。珠子受け取れ」
沐浴が済み、新しい肌着に包まれてホカホカ状態の暁人が、たまちゃんに抱かれて出てきた。
「お父さん、ちゃんと聞きましたか?」
たまちゃんがしたり顔で僕に言う。
「うん」
風呂場から出たお義父さんは、脱衣所の外に僕がいる事に驚いて、膝下まで上げていたズボンの裾を慌てて下ろした。
「ただいま戻りました。暁人の風呂、ありがとうございます」
「う、ウン……おかえり」
立ち去ろうとするお義父さんは、耳が真っ赤だ。照れ隠しの短い返事と分かったら、本当に気が楽になった。
でも、まだ一つだけ聞きたい事がある僕は、お義父さんの背中に話しかけた。
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