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「あの……お義父さん!」
「えっは、はい?」
「いつも、僕が一番風呂をいただいてますけど、本当は、一番風呂はお義父さんが入っていたんじゃないですか?
僕、最後の残り湯で構わないので、お義父さんが先に入ってください」
「……珠子は?」
「あ、暁人を連れて部屋に行ったみたいですけど」
廊下に僕とお義父さん2人きりだと確認して、沐浴の為に捲っていた袖を直しながら、お義父さんは「ああ、うん」と口ごもってから「違うんだ」と言った。
「……いつも一番風呂だったけど、いいんだ。
会社で仕事して、疲れて帰る場所が嫁の実家だから、修蔵君も気が休まらないだろ?
せめて風呂くらい、先に入ってのんびりしてほしい……っていうか……うん、そう」
「お義父さん……」
男同士だからこその気遣いに、涙が出そうになる。あれはお義父さんの優しさだったんだ。
「ありがとうございます。
……でも、ここの家長はお義父さんだから、やっぱり僕は後でいいです」
「うん、あの、違うんだ」
「え?」
「や、さっきのも本音なんだけど……私ね、はじめの風呂嫌いなんだ」
「え!?」
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