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「ただいまー……」
廊下を抜けて居間へ行くと、お義父さんが顔を隠すように新聞を広げた。
「た、ただいま帰りました」
「……ぉ……ウム……」
義父との会話は3秒。後は漬物石を乗せられたような重苦しい沈黙。
接客中はもう少し喋るのだろうけど、普段は無口なお義父さん。見た目も、花屋より盆栽屋の方がしっくりくる。
付けっぱなしのテレビから大爆笑が響いて、喋ろうとする僕も、無言のお義父さんも、何故かソワソワとした。
「あれ修蔵くん、おかえりなさい。
何やってんの早く着替えておいで。珠子、さっき暁人のオムツ変えてたから部屋にまだ居るよ」
「あ、はい、ただいまです」
台所から顔を出したお義母さんの、優しくも冷たくもない言葉に助けられ、僕は妻と子供が居る部屋へ行った。
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