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たまちゃんの実家の風呂は、湯船が大きい。
深さもあるから、体のでかい僕が肩まで浸かっても、まだ一人分の余裕がある。
「ふぅーー……」
温かいお湯に押し出されるように、今日の疲れが口から出ていった。
まだ角のある湯の感じは、僕が一番風呂をいただいているからだ。ゆっくり身体が温まってくると、再び喉の奥から安堵の声が漏れる。
今まで気にしていなかった洗い場の片隅に、ベビーバスが立てかけてあった。
「大きな桶」のようなそれは、暁人が使っている風呂だと思うと、なんて「小さな風呂」なんだ。
ベビーバスにお湯を入れてみて、暁人が入っているのを想像してみた。小さな風呂なのに、両手で暁人の大きさを作ってみると、これでもでかいくらいだ。
カラカラと脱衣所の引き戸が開いた音がしたと思ったら「まだ修蔵くんが入ってるわよ」とお義母さんの声がした。
黙って戸を閉めたのは、たぶんお義父さんだ。
お義父さんは、家に転がり込んで来た僕をどう思ってるのだろう。同じ男として、情けないと思うだろうか。早く出て行って欲しいと思っているだろうか。
湯気のように立ち昇る不安は、僕をどんどん情けない男にする。
そんな気持ちを追い払いたくて、僕はざぶんと湯船へもぐった。
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