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クレーンゲームのアームが動く。
ガーっと音を立て、安っぽいメロディを奏でながら、動いていく。
そうしてステンレスのアームは下に降下していくと、両手に納まるくらいのガラス張りの空間の中で、クマのぬいぐるみを意地悪そうに掴んで、ケチなほど簡単に落とした。
それを、ただ、ため息をつくと、片眉を上げ、遥(はるか)は心の中で言った。
―――あーあ…落ちちゃった。
都内の、渋谷近くのゲームセンター。
若い子がよく遊びに来る場所に、遥はいた。
薄暗いというより、目がちかちかしそうな配色の店内。
いろいろなゲーム機が置いてあり、耳が難聴になりそうな騒がしさだった。
だが、そんなことに、遥は気にも留めない。何とか、この目の前のぬいぐるみを取りたかった。右に左にガラスの前を移動し、縫いぐるみの位置取りを確かめる。
そうして、また百円玉を入れた時だった。
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