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「あと……声、まだ、出ないんだろ。大丈夫なのか?」
今度は首を縦に。
「……あっ、そ……」
さっきと同じ言葉。でも、さっきとは違う。互いに、自然と笑みがこぼれる。
微妙な空気が流れ、居心地悪そうにあいつが口を開く。
「あの、じゃ、俺、向こうの部屋、いるから。なんかあったら、呼んで……あっ、でも、声出ないんだよな……えっと……」
珍しく困っている。可愛いなぁなんて思っていたら、のどに…違和感……
咄嗟に体をくの字に折り曲げる。なにかが、せり上がってくる感覚。きもちわるい。
「お、おい、どうした?大丈夫か?」
ぎゅっと目を瞑る。それでも視界はまわる、まわる。
あいつが、背中をさすってくれている。さすられた部分からだんだん体が治っていく気がした。
久しぶりに……ケンカ以外であいつと触れた……。
ついに、気持ち悪さはなくなった。病は気から、って、本当にその通りだと常々思う。
「あ」
「え?」
「こえ……出る!声が出る!」
「ほ、本当だ……なんで急に治ったんだ?」
「分かんないけど、とにかくやった!やっと声が出る!」
なんでか嬉しくて騒いだ。騒ぎすぎて喉が痛くなった。
「変なやつ、また声出なくなっても知らないぞ」
「もうそんなヘマしませんー!」
「どうだか」
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